歯内療法時の注意事項について

歯内療法時の注意事項について

2022年9月7日

✅治療途中のお痛みについて

  1. 一過性の術後痛:根管治療は、50%の確率で治療後に痛みが出現します。これは、治療による刺激で周囲組織に炎症反応が起きて出現するもので、治療成功の可否とは関係ありません。症状としては、治療した歯の噛んだ時の違和感や、治療部位周辺の疼くようなお痛みで、通常は2〜3日でおさまります。日常生活に支障が出ることはほとんどありませんが、心配な方は必要に応じて、術後に鎮痛剤をお渡しいたします。
  2. 術後のフレアアップ:稀に術後2日くらい経ってから1〜5%の確率で急激な痛みが出現することがあります。こちらも、治療による刺激で根管内の細菌叢が変化して引き起こされるもので、治療成功の可否とは関係ありません。症状としては、ズキズキとした強烈な自発痛が出現し、おおよそ1週間以内に消退しますが、追加で咬合調整と鎮痛剤、抗菌薬投与による消炎処置を行い、症状の早期改善を目指します。

※特に以下の所見が認められる場合は術後のフレアアップのリスクが高いと言われています。

  1. 治療前から症状がある場合
  2. 根尖透過像はあるが瘻孔が無い場合
  3. 細くて長い根管の場合
  4. 根管内の汚染が強い場合

✅治療完了後のお痛みについて

  1. 持続的な術後痛:根管治療は例え治療が成功していても、治療完了後も1ヶ月程度違和感が続くことがございます。基本的には仮歯などで経過観察を行い、症状が消失してから最終的な被せ物を入れます。また、病巣の明らかな改善が見られなければ、追加で外科処置を検討する場合もございます。
  2. 非歯原性疼痛:治療前の段階で痛みが強かった場合や、治療前から慢性的な痛みが長く続いていた場合、中枢性の変化や末梢性の神経障害を起こしていたり、筋-筋膜性の疼痛を引き起こしている可能性があります。これを非歯原性疼痛と言い、歯の痛みを感じているにも関わらず、痛みの原因は別のところにあるため、治療のアプローチを変える必要があります。この所見が見られる場合には、専門医療機関との連携が必須になります。
  3. 垂直性歯根破折:治療後に一旦症状が改善したにも関わらず時間の経過と共に症状が再燃したり、治療後も症状の改善が見られない場合、垂直性の歯根破折を起している可能性があります。歯の破折に関しては、たとえマイクロスコープやCTなど最先端の技術を用いても100%検出することはできず、確定診断が下るまで平均2年かかると言われています。その場合は、経過観察や外科処置によって確定診断がつき次第、通常は抜歯となります。

✅治療を中断するリスクについて

  1. 歯を残せなくなってしまう:根管治療中は、“歯の内部が露出”している状態です。治療を中断してしまうと、歯の内部でばい菌が増殖して内側から歯が崩壊し、早いとわずか半年ほどで抜歯以外の選択肢がなくなってしまいます。本来であれば残すことができた歯を失う損失は極めて大きいといえます(日本で歯の価値についてアンケートを行ったところ、歯1本 約35万円という結果でした)
  2. 周囲にばい菌がうつる:根管治療を必要としている歯は、ばい菌に感染しています。その状態を放置すれば、周りの歯や歯ぐきにばい菌が移ってしまいます。その結果、失う歯の本数が1本から複数本へと増えてしまうこともあります。
  3. 細菌感染が顎骨や全身へと広がる:周りの歯や歯ぐきに広がったばい菌を放置するとお顔や全身へ広がり、蜂窩織炎(ほうかしきえん)や敗血症にまで発展することもあります。たった1本のむし歯を放置したせいで、生命に関わるような非常に危険な状態になる可能性もございますので、歯の神経に到達する大きなむし歯がある場合や、根管治療中の歯を放置するということだけは、絶対に避けください。

※根管治療の途中で長期にわたって治療中断が必要な場合や、今後の通院が不可能となってしまう場合には事前にご相談ください。